ある年、櫻正宗の蔵元・山邑太左衛門は、例年より多く仕入 れた米が余ったため、常々考えていた実験のひとつを行いま した。三日三晩、糠が出なくなるまで極限に磨いた白米で酒 を造ったのです。
ところが、できあがった酒は思惑と違い、口に含んだときの 粘り気がなく、従来の酒に慣れている舌には物足りなく感じ られました。さらに液体の色が薄いこともが気に入らず、好奇 心からの試みが米を無駄にしてしまったと強く後悔をしたそう です。